言わずと知れた「鋼の錬金術師」「銀の匙」の作者である荒川弘先生の農業エッセイになります。
この作品は銀の匙を読んだことのある方に是非読んでもらいたい作品になっています。
というのも銀の匙では農業高校の青春を描いた作品であるのに対して百姓貴族は荒川弘先生の実生活そのものであるからです。
登場人物は荒川弘先生のご家族が中心でそのご家族も非常にキャラが濃く特に荒川先生の親父殿に関しては妊娠、出産の時でさえ休載しなかった荒川先生をして「この親父殿には一生勝てない」と言わすほどとてつもない人物になっています。
この親父殿何度か死にそうになっているのですが、その度牧場の家畜が死んでおり、身代わりなんだろうなと本編で荒川先生が述懐しております。
全編ギャグテイストで進んでいきますが、家畜に対しては愛とともに冷徹さが描かれており。
肉用の牛にエサを与えてる時の荒川先生の「たんとお食べ。たんと食べてやるから。」はこの作品を象徴する1コマであるといえます。
人間がケガをしないように牛の角を根元から切り焼きごてで止血をするシーンがありギャグテイストながら衝撃のシーンでした。
ここまでのシーンは銀の匙でも描かれておらず、農業の残酷な部分も描かれております。
こういった残酷な部分というのはおそらくほとんどのメディアが取り上げることはないし目にする機会はありません。
私自身、北海道の放牧されている牛を何度か見たことがありますが、なぜ角がないのかと疑問に感じる部分ではありましたが百姓貴族を読み初めて疑問が解決しました。
百姓貴族は冷徹な部分、残酷な部分と書いてしまいましたが、全編ギャグテイストでありますので決してグロテスクではなくコミカルに描かれており読みづらいという点はありませんので安心してお読みください。
そして、冷酷、残酷を通り越して圧倒的に荒川先生の農業に対する愛が描かれています。
この百姓貴族から発展して銀の匙が出来上がったといっても過言ではありません。銀の匙のファンはもちろん今まで荒川弘先生の作品を読んだことがない人にも楽しむことのできる作品です。