大人の男性、女性どちらにも読んで欲しい作品です。
性に真っ向から挑む内容なので、少年少女が読むには少し刺激が強いかなと思います。
ただ、不思議といやらしくはありません。
そこが主人公の職業である高校教師とも結びついているかと思います。
読むほどに、哀しい気持ちと、いとおしい気持ちがわいてきます。
あらすじは、主人公の美鈴が、人と関わりながら性への認識を改めていきます。
過去に男性から受けた性的な暴行と、現在も続く不本意な性的関係、そしてそんなことがあっても自分自身にくすぶる性的欲求に嫌悪感を持っている美鈴が、同じく自身の性に振り回され苦しむ男子生徒と出会うことで、少しずつ変わっていきます。
美鈴に影響を受けて、周りの人物たちも少しずつ心に変化が起きてきて、ラストは、もっとも望んでいた形で締めくくられます。
少なくとも私にとっては、一番納得がいく結末でした。
性と生という字は似ています。
この作品は性だけに焦点をあてて刺激をあおる内容ではなく、登場人物のひとりの出産というイベントを交えることでどこか聖なるものに押し上げているのが印象的です。
私が一番好きなシーンは二つあって、一つは美鈴が生徒である新妻に、「知らないの?女が正しく生きられないのが誰のせいなのか」と静かに問いかけたところです。
暴力によっていうことを聞くしかない女の弱さを、まだ未完成な男子高校生にぶつけました。
教師としては少し間違ったセリフなのかもしれないけれど、すべての女性の心のどこかにしまってある本音なのではないかと思います。
男性の前で、圧倒的な力の前で不本意に屈したことのある女性ならきっと共感できるはずです。
二つ目は、美鈴をずっと苦しめていた男・早藤のラストです。
全女性の敵とも言うべき最低な人間として描かれていた早藤ですが、婚約者との間に子どもが出来てしまい、その恐怖から首吊り自殺を図ろうとします。
婚約者が異変に気付き、ロープを切ることで未遂に終わりましたが、今までおとなしかった婚約者から怒りをぶつけられ、放心状態となり、自ら警察に罪を告白。
そして収容されます。
印象的なのは、収容先の面会室に、婚約者が会いに来るシーンです。
「また来るから」と告げる婚約者に、廃人状態の早藤が「はい、お願いします」というところです。
これまでさんざん女を弄んでいた男が、ひとりの女の前にきちんと向き合ったいいシーンでした。
先生の白い嘘は、重い作品ですが、必ず心にささるシーンがひとつはあると思います。すべての成人に読んでもらいたいです。